幸之助論 「経営の神様」松下幸之助の物語


「素直な心」が道をひらく

「いくつもの逆境をくぐり抜け、自分の夢を組織の夢に、さらに社会に奉仕する夢にまで高めた」
「『利益をあげているということは、社会に奉仕、貢献できている証である』という幸之助独自の利益観も意義深い」
(神戸大学大学院 経営学研究科 教授 金井壽宏)

コッターが、松下幸之助の生涯を丹念に調べ上げ、分析した。幸之助の人生は、仕事においても私生活においても、常に悲しみと喜び、蹉跌と成功、不安と夢、恐怖と希望が拮抗しつつ同居していた。一つひとつの節目をくぐるたび、幸之助の感情は大きくうごめいたはずだと、コッターは主張する。経営者とは、夢に満ち溢れた熱い人物であるのではない。また理詰めで分析的な問題解決をする人でもない。積極性、論理性より、むしろ一見マイナスに見える面や感情に彩られた機微が大事なのである。それらについて、コッターは、幸之助を公人、私人、心の世界という3つの視点でとらえ、特に幼少期からの心理的外傷(トラウマ)がテーマとなる「心の世界」まで描き切ろうと意欲的に取り組んだ。偉大な経営者に対しても、存在そのものを神格化しないのがコッター流である。経営学分野における有用な分析的伝記であることを神戸大学大学院経営学研究科の金井壽宏教授が解説する。