「富」の概念が、いま大きく変わろうとしている。
本書は、明日の富がどのようにして生み出され、誰がどうやってその富を手に入れることになるのかをテーマとしている。トフラーは世界を席巻しつつある「富」の革命的変化について、その実相を見事なまでに明快に描き出した。
最初の著作でありベストセラーともなった『未来の衝撃』(1970年、原題FUTURE SHOCK)以来、『第三の波』『パワーシフト』などを通じ、トフラーはハイスピードで変化しつづける現代社会について、つねに新たな考え方を示してきた。経済、ビジネス、政治、家族問題、日常生活といったあらゆる領域で、一見バラバラでつながりのないような出来事の間に関連性を見出し、社会全体をひとつの文脈で理解させてくれる。
本書においても、グローバリゼイション、中国の台頭とヨーロッパの衰退、核家族の崩壊から遺伝子工学、エネルギー問題、インターネットまで、現代社会の諸相をつぶさに検証しつつ、その論理的で深い洞察により時代を見抜くカギを我々に与えてくれている。
21世紀の富とは、たんに「お金」だけではない。しかも、工業化時代(=第二の波)の経済学で理解できるものでもない。脱工業化社会=知識社会の実態を把握するために、トフラーは教育から育児、ハリウッドから中国まで縦横無尽に探求の幅を広げる。一見無関係なカーレースとチョコレート・クッキーとリナックスにも、それらを結びつける隠れた接点があるのだ。
『第三の波』では、「生産消費者(プロシューマー)」というキーワードを用いて、脱工業化時代の現代人のあり方を明らかにした。生産消費者とは、自ら消費するためにモノやサービスを生産する人のことで、売ったり交換したりするためにモノやサービスを生産するという工業化社会のモデルを超えている。
本書ではさらにその概念を推し進めることで、我々が行ういかに多くの活動が、隠された非金銭経済から金銭経済への富の移転になっているかがわかる。つまり、子育てやボランティア、ブログへの書き込み、町内会活動などの非金銭経済から生み出される不可視の富が、(われわれがふつう「経済」と呼ぶ)金銭経済をじつは裏で支えているのである。これこそが現代社会の実相だ。この生産消費の活動は、今や急激に膨張し、ラディカルな変化を社会に強いている。しかも、明日の「富」を決めるほどの大きさにまでなろうとしている。
本書は数々の斬新な切り口で、読者に未来を考え、未来に対処するための強力な思考ツールを提供する、著者久々の大作である。