この本は、ミクロ経済学を初めて学ぶ人のための独習書です。今回出版したのは、その第1巻で、政府の失敗と市場の失敗を分析しています。続いてでる第2巻では、格差是正と効率化との関係について考えます。この本を読むことによって、ミクロ経済学的分析方を用いて、日本が直面している広範な経済政策問題に関する対応策を自分自身で考えられるようになることを目的としています。そのため、本書は次の特徴を持っています。
第1に、現実の日本の経済政策問題を数多く分析しています。例えば、法曹界における極度の参入規制(第3章)、保育所への公的補助の根拠や国民年金の根拠等情報の非対称性がもたらす市場の失敗の実例(第9章)、道路特定財源(第10章)等です。
第2に、加減乗除以外の数学を用いていません。また、第1巻では、需要・供給曲線と余剰の概念のみで分析しています。これだけで、実に多岐にわたる問題を、切れ味鋭く分析できることに読者は驚かれるでしょう。本書を読むことによって、余剰分析を自家薬籠中のものとすることが出来ます。(無差別曲線は、第2巻の後半ではじめて導入されます。)
第3に、読者はまったくの初心者であることを想定しているので、説明は、アメリカの教科書と比べてもより丁寧です。
第4に、この本の読者の多くが時間のない独学者であることを想定して、この本を読了できなくても、すなわちどこで途中下車しても、それなりに役に立つ洞察が得られるようにしました。極端な話、序章だけを読んでも役に立つし、第3章まで読めば経済学の基本的考え方はすでに押さえられるように構成されています。 多くの教科書が最後まで読んではじめて何らかの意味のあるメッセージが伝わる構成になっているのに比べて、これは本書の特徴的な点です。
【目次】
市場と政府の役割分担/市場/供給/余剰と参入規制/市場介入/弾力性・限界収入/規模の経済:独占/外部経済と不経済/減産補助金と環境権/情報の非対称性/公共財/権利の売買